【分かりやすい】ウェブアクセシビリティの導入方法を解説!注目の理由やメリットなども紹介
更新日:2024.10.11 公開日:2024.04.19
マーケティング
お知らせ
自社のサイトにウェブアクセシビリティの導入を考えている人のなかには、「導入したいけれど方法が分からない」「導入しないと何かリスクはあるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
民間事業者の合理的配慮の提供が2024年4月1日より義務化されたことを受け、ウェブアクセシビリティの導入に注目が集まっています。ウェブアクセシビリティの導入は、すべてのユーザーに対する配慮を示し、Webサイトの品質や信頼性を高める重要なプロセスです。自社のWebサイトや情報システムを、誰もが使いやすく安心して利用できるように、なるべく早めにウェブアクセシビリティを導入することが大切です。
この記事では、ウェブアクセシビリティの導入方法や導入すべき理由などを解説します。導入するメリットについても紹介しますので、ウェブアクセシビリティの導入を考えている方はぜひご覧ください。
目次
ウェブアクセシビリティの導入が求められる理由
ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害、利用環境などの有無にかかわらず、すべての人がWebサイトや情報システムにアクセスし、利用できるようにすることです。ビデオコンテンツに字幕が出るようにしたり、カーソルの大きさを変えられたりと、誰もが不自由なく、平等にアクセスできるのが理想です。
インターネットの普及により、Webサイトや情報システムが老若男女と問わず、社会生活において使われるようになりました。
しかし、Webサイトがウェブアクセシビリティに配慮して作られていないと、利用者の症状や状況によっては、Webサイトを介して情報を入手できなかったり、Web上で行う申込や手続などのサービスが利用できなくなったりするなど、社会生活で大きな不利益が生じます。さらには、災害時に避難場所などの必要な情報を得られない状況となれば、生命の危機に直面するおそれさえあるのです。
このような理由から、Webサイトで提供している情報やサービスを常に誰もが安心して利用できるように、ウェブアクセシビリティの導入を検討する必要があります。
ウェブアクセシビリティの導入に「法的義務」はない
2024年4月1日に障害者差別解消法の改正法「合理的配慮の提供」の義務化が施行されました。しかし、この義務化よってWebサイトのアクセシビリティへ対応が法的義務になるわけではありません。
ウェブアクセシビリティを含む情報アクセシビリティは、「環境の整備」として位置づけられており、行政機関や民間事業者は、事前的改善措置として、計画的に推進することが求められています。
合理的配慮と環境の整備の内容と対応例を、以下の表にまとめました。
合理的配慮 | 環境の整備 | |
---|---|---|
内容 | 個々の障害者に対して、状況に応じて実施される措置 | 不特定の障害者を対象に行われる事前的改善措置 |
対応例 | ・車椅子利用者のために、段差に携帯スロープを渡す。 ・サイトの掲載情報が音声読み上げソフトで読み上げられないと問い合わせがあり、読み上げることが可能なテキストファイルを提供する。 |
・車椅子利用者のために、スロープを設置し段差を解消する。 ・音声読み上げソフトで読み上げ可能になるように、ホームページを修正する。 |
合理的配慮と環境の整備の大きな違いは、事前に改善措置が行われるか行われないかという点です。環境の整備に割り当てられるウェブアクセシビリティの導入は、現段階ではあくまで「努力義務」であり、法的な罰則が課されるわけではありません。
しかし、ウェブアクセシビリティの導入が注目されている理由は、合理的配慮の義務化が深く関係しているためといえます。
ウェブアクセシビリティの導入が義務化されていなくても、すべてのユーザーが使いやすいWebサイトを提供するために、ウェブアクセシビリティを確保することは重要です。障害を持つ人へ向けた環境の整備ができていないと、何らかの改善や問い合わせがあった場合に、合理的配慮として措置を行う法的義務が発生する可能性があるということです。
このように、「合理的配慮」と「環境の整備」は深い関係性があるため、ウェブアクセシビリティの導入に関心が高まっています。
ウェブアクセシビリティの確保は、障害のある人や高齢者、色覚特性のある人など多くの人がデジタルサービスを利用できるようになります。
今後、環境の整備が努力義務から法的義務に改正する可能性もあるため、事前にウェブアクセシビリティの確保に取り組むことが重要です。
【4STEP】ウェブアクセシビリティの導入方法
Webコンテンツにウェブアクセシビリティを導入するには、専門的な複数の規格とガイドラインが必要です。ウェブアクセシビリティの導入は、主に以下の4ステップから成り立ちます。
- 1、ウェブアクセシビリティ対応する範囲の決定
- 2、ウェブアクセシビリティのレベルを決める
- 3、ウェブアクセシビリティの試験を実施
- 4、ウェブアクセシビリティの試験結果を公開
ここでは、デジタル庁のガイドブックにある、ウェブアクセシビリティの国内規格「JIS X 8341-3:2016」を参考に、それぞれ詳しく解説します。
1、ウェブアクセシビリティ対応する範囲の決定
ウェブアクセシビリティ導入のために、まずは適応させる範囲を決定しましょう。対象サイトのドメイン名もしくはサブドメイン名を単位とするのが一般的です。ただし、範囲を決定するときは、サイトの目的や対象ユーザー、予算、リソースなどを考慮する必要があります。
また、一部の範囲をウェブアクセシビリティ対象から外す場合、対象外となるページを誰もが理解できるように、それらのページを示した一覧を掲載することが必要です。
2、ウェブアクセシビリティのレベルを決める
次に、目標とするウェブアクセシビリティの適合レベルを決定します。「JIS X 8341-3:2016」で定義されている適合レベルは、以下の3つです。
適合レベル | 特徴 |
---|---|
A(最低レベル) | 基本的なアクセシビリティ要件を満たす |
AA(中間レベル) | 広範なユーザーに対応し、一般的に推奨されるレベル |
AAA(最高レベル) | 最も厳格な基準で、特殊な状況に対応 |
原則は、「AA」の適合レベルにすることを目標とします。目標を達成する期限や担当の部署名、連絡手段、把握済みのウェブアクセシビリティ上の問題点を記載するなどすると親切です。
3、ウェブアクセシビリティの試験を実施
ウェブアクセシビリティの方針が決定したら、「JIS X 8341-3:2016」の適合レベルに準拠しているかの試験を実施します。適合レベル「AA」に準拠しているかを試験で確認するためには、以下の達成基準が適合しているかをひとつひとつ確認することが必要です。
- ・適合レベルAの達成基準:25個
- ・適合レベルAAの達成基準:13個
この試験では、視覚障害、聴覚障害、運動障害、認知障害など、さまざまな障害を持つユーザーがサイトを利用できるかを確認します。試験ツールや専門家のレビューを通じて、問題点を特定し、修正します。
4、ウェブアクセシビリティの試験結果を公開
試験結果を公開するのが最後のステップです。これにより、サイトがどの程度アクセシビリティ基準に適合しているかをユーザーに知らせることが可能です。また、ウェブアクセシビリティの透明性を高め、ユーザーの信頼を得るためにも重要といえます。
日本規格「JIS X 8341-3:2016」のウェブアクセシビリティ対応度を示す方法は、以下の3つです。
準拠 | 試験を行って達成基準すべてを満たしている場合に使用可能。公開するときは試験結果を合わせて公開。 |
---|---|
一部準拠 | 達成基準の一部を満たしている場合に使用可能。一部準拠の場合は追加で今後の対応方針を記載。 |
配慮 | 試験の実施と結果の公開の有無は問わない。 |
※ JIS規格に基づいた表記方法ではなく、WAICが独自に定義した表記方法
上記の対応度の表記をWebサイトに用いる場合は、それぞれ条件がありますが、どの対応度を表記する場合も、「ウェブアクセシビリティ方針の提示または公開」は必須です。
詳しくは、WAICが公開している「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン」をご覧ください。
ウェブアクセシビリティのガイドラインと規格
ウェブアクセシビリティの導入は、視覚・聴覚などの身体障害や認知障害といった、把握の難しい利用状況を網羅的に把握しなくてはなりません。そのため、民間事業者が個別に対応するのは難しく、体系的なガイドラインに従うことが重要です。ウェブアクセシビリティ導入の際に使われれる代表的なガイドラインと規格は、以下のとおりです。
- ・WCAG
- ・JIS
それぞれ解説します。
WCAG
WCAGは、ウェブコンテンツのアクセシビリティを向上させるための国際的なガイドラインです。このガイドラインは、世界中のWeb開発者とWebサイトの所有者にとっての標準となっています。
WCAGは、視覚、聴覚、運動、話す、認知の障害を持つユーザーを含むすべての人が、Webコンテンツにアクセスできるようにガイドラインが設計されています。
WCAGには複数のバージョンがあり、最新のバージョンは「WCAG2.2」です。
JIS X 8341-3
「JIS X 8341-3」は、日本国内のウェブアクセシビリティ規格です。これからウェブアクセシビリティに対応する日本の民間事業者は、基本的にこのJIS X 8341-3に準拠することを目指せば問題ありません。
一般的なアクセシビリティの課題に加えて、日本語特有の課題を解決するための要件が規格が発行されていましたが、「WCAG 2.0」の内容を取り込む形で大きく改定がありました。その後、「WCAG 2.0」と「ISO/IEC 40500:2012」と全く同一内容の一致規格として改定されたのが、「JIS X 8341-3:2016」という規格です。
それぞれのガイドラインと規格が同じ内容になったことにより、ウェブアクセシビリティのチェック方法やチェックツールを共通化できることに加え、国ごとに違うガイドラインや規格を使う必要がなくなりました。
ウェブアクセシビリティの導入|5つのメリット
ウェブアクセシビリティを導入することのメリットは、以下の5つです。
- ・義務化されたときに対応しやすい
- ・会社のイメージダウンを防止
- ・ユーザビリティの向上
- ・訴訟リスクを減らせる
- ・SEOの効果がある
それぞれ解説します。
義務化されたときに対応しやすい
今後ウェブアクセシビリティの対応が法的に義務化されると、すでにアクセシビリティを考慮して設計されているWebサイトは、追加の改修が少なくて済むのがメリットです。
事前にウェブアクセシビリティに対応したWebサイトにしておくことで、義務化されたときに焦って対応ししなくてよいため、移行もスムーズに進みやすいといえます。
また、ウェブアクセシビリティを導入するときに得た知識がインプットされているため、コストや時間も抑えられ、落ち着いて対応できるでしょう。
会社のイメージダウンを防止
自社サイトのウェブアクセシビリティを考慮することで、すべてのユーザーに対する配慮を示せます。
義務ではないため、未対応でも違反ではありませんが、「合理的配慮の提供」への配慮が不足している会社というイメージダウンにつながってしまうかもしれません。
ウェブアクセシビリティに対応することで、会社の社会的責任を果たしているとの好印象を与え、ブランドイメージを向上できます。
ユーザビリティの向上
ウェブアクセシビリティの導入は、障害を持つユーザーだけでなく、高齢者やけが人など、すべてのユーザーにとって使いやすいWebサイトを実現できます。
例えば、Webサイトに正確な音声の再生機能が付くことにより、目の不自由な人が健常者と同様の情報を得ることが可能です。また、ページごとに設置されているボタンの位置を統一すれば、マウスを必要以上に動かす必要がなくなるため、手の不自由な人や手を怪我している人でも操作しやすくなります。
このように、誰もが見やすい、使いやすい、アクセスしやすいWebサイトや情報システムは、ユーザーエクスペリエンス全体の向上につながるでしょう。
訴訟リスクを減らせる
ウェブアクセシビリティの対応がされていないサイトを利用したユーザーが、何らかのハンディを負った場合、利用者には民事訴訟を起こせる権利があります。
ウェブアクセシビリティ基準に準拠していることは、信頼性を高め、障害を理由とする差別訴訟のリスクを減らすことが可能です。
以前海外で、あるタレントのWebサイトがアクセシブルではないという理由から、目が不自由なファンが訴訟を起こした事例などが例として挙げられます。
ウェブアクセシビリティに対応しておけば、このような民事訴訟のリスクを避けられるため、早めに導入しておくことが重要です。
SEOの効果がある
検索エンジンは、ユーザーにとって利便性が高く、アクセシブルなコンテンツを好みます。そのため、ウェブアクセシビリティの向上は、結果的にSEO(検索エンジン最適化)にも有利に働くでしょう。
ページの情報を伝える画像に代替テキストを正確に入れたり、見出しやリストなどの文書構造をマークアップしたりなどが、アクセシビリティ向上のための施策例として挙げられます。
ユーザーが使いやすく、アクセスしやすいサイトにするために行った施策が、結果としてWebサイトの検索順位を向上させ、多くのユーザー獲得につながるでしょう。
まとめ
ウェブアクセシビリティの導入は、誰もが平等にWebサイトや情報システムを利用できるようにするための重要な取り組みです。早めに取り組むことで、今後ウェブアクセシビリティの対応が法的に義務化されるとき、Webサイトの改修が少なくて済んだり、ユーザビリティの向上ができたりなどのメリットがあります。
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