ウェブアクセシビリティは、障害を持つ人や利用環境、年齢にかかわらず、すべての人がウェブサイトで提供されている情報や、サービスを利用できるようにするための重要な取り組みです。
しかし、「ウェブアクセシビリティってなに?」「具体的にどのように改善すればいいの」など、ウェブアクセシビリティに対して、さまざまな疑問を持つ人も多いでしょう。
この記事では、ウェブアクセシビリティの概念や必要性、実現方法の具体例などを解説します。ウェブアクセシビリティに対応するメリットについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ウェブアクセシビリティとは|全ての人がウェブサイトを利用できる
ウェブアクセシビリティとは、すべての人がウェブサイトにアクセスしやすい状態のことを指します。性別や障がいの有無、高齢者であることにかかわらず、すべての人がウェブサイトを利用できることが重要です。
障害のある人だけでなく、事故や病気で一時的に能力が制限されている人、老化により感覚が衰えている人も含め、さまざまな人がウェブサイトを使いやすいように配慮することが求められます。また、利用環境により制限がかかる場合も、 不便な状況を良くするためにウェブアクセシビリティ対応を行う必要があります。
このように、「すべての人々」がウェブサイトを不自由なく使えるようにすることが大切です。
ウェブアクセシビリティの必要性
現代社会において、ウェブサイトは重要な情報源です。そのため、年齢や性別、障害の有無にかかわらず、さまざまな人がウェブサイトへアクセスしています。また、デバイスも多様化しており、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなどを利用してウェブサイトへアクセスする人もいるでしょう。
しかし、ウェブサイトがウェブアクセシビリティに配慮して作られていないと、利用者の症状や状況によっては、社会生活で大きな問題につながります。例えば、情報を入手できなかったり、ウェブ上で行う申込や手続きなどのサービスが利用できなくなったりするなど、平等な情報やサービスの提供が受けられません。
このような理由から、すべての人がウェブサイトで提供している情報やサービスを安心して利用できるように、ウェブアクセシビリティを確保する必要があるのです。
【例】ウェブアクセシビリティを実現
ウェブアクセシビリティを実現するための具体例を3つ紹介します。
字幕や手話通訳
動画コンテンツに字幕や手話通訳を提供することで、聴覚障害を持つ人々も情報にアクセスできるようになります。
音声情報をテキスト形式で伝えたり、情報を視覚的に伝えられることによって、聴覚障害を持つ人でもウェブサイトから情報を得ることが可能です。また、動画コンテンツでは字幕をつけることで情報が伝わりやすくなり、聴覚障害を持つ人だけではなく、海外の人や音声が出せない環境にいる人も情報を受け取れるようになります。
このように、字幕や手話通訳の提供は、ウェブアクセシビリティを実現するための重要な施策の一つです。
互換性の確保
ウェブサイトを利用するとき、ユーザーが使用するデバイスやブラウザは多様化してきています。異なるデバイスやブラウザを使用しても自由にウェブサイトを閲覧できるようにするためには、互換性を確保することが重要です。
互換性を保つための方法として、レスポンシブデザインを採用したり、特定のブラウザに依存しないコーディングをすることが挙げられます。また、画像やフォントサイズがデバイスに適した形で表示されるような設計も重要です。
どのようなデバイスやブラウザを使用しても、ウェブサイトへアクセスできるようにすることで、より多くの人が情報やサービスを得ることが可能になります。
わかりやすいコンテンツの提供
ウェブコンテンツは、すべてのユーザーにとってアクセスしやすく、理解しやすい形で提供する必要があります。コンテンツをわかりやすくするためには、説明を簡単にすることや専門用語を使わないことが重要です。
また、内容だけではなく見出しやリスト、図解を使って情報を整理することで、情報を視覚的に捉えやすくなりユーザーが内容を理解しやすくなります。
ウェブアクセシビリティに対応する3つのメリット
ウェブアクセシビリティに対応するメリットは、下記の3つです。
- ユーザビリティが高まる
- SEOに効果がある
- 離脱していた層または見込み客の獲得
それぞれ解説します。
ユーザビリティが高まる
ウェブアクセシビリティに対応することで、ウェブサイトの使いやすさを向上させます。ユーザーにとって、ウェブサイトの有用性が高まり、高齢者や障害を持つ人でも簡単にウェブサイトへアクセスできるようになるのです。
また、さまざまな障害を持つ人をはじめ、外国人や高齢者、多様なデバイスの違いなども考慮して幅広くウェブアクセシビリティ対応することで、ユーザーの満足度が向上します。
さまざまな人に対応できるウェブサイトは、結果的にアクセス数がアップしたり、利用者を増加させることにつながります。
SEOに効果がある
ウェブアクセシビリティに対応することは、SEOとしても効果が期待できます。
Googleに評価されるためにはユーザーにとって利便性が高く満足度の高いページであることが重要です。ウェブアクセシビリティに対応しているウェブサイトは、あらゆる人にとって使いやすくなり、満足度が上がります。
また、ウェブサイトのユーザビリティを良くすることで、ユーザーの滞在時間も伸びます。ページの滞在率が上がることは、検索エンジンが重視している指標の一つであるため、SEO観点でも評価が上がるのです。
離脱していた層または見込み客の獲得
ウェブサイトは、ユーザーが「情報がわかりにくい」「操作しにくい」「表示が遅い」などを感じると、そのウェブサイトには訪問しなくなります。ウェブアクセシビリティに対応したウェブサイトにすることで、これまで離脱していった層の獲得につながるのです。
また、以前はウェブサイトを利用できなかった人が、利用できるようになります。多くの人々がウェブサイトを訪れるようになることで、多くの潜在的な顧客と接触する機会が生まれ、ビジネス成長の可能性が高まります。
【全事業者が対象】ウェブアクセシビリティ対応の義務化
2024年4月に施行される障害者差別解消法の改正により、「合理的配慮」が義務化されました。これに伴い、ウェブサイトを持つすべての事業者に対して、ウェブアクセシビリティ対応の義務が求められます。
ここからは、ウェブアクセシビリティ対応の義務化について詳しく解説します。
背景|デジタルデバイドの解消
ウェブアクセシビリティ義務化の背景には、「デジタルデバイドの解消」があります。デジタルデバイドとは、インターネットやパソコンを使える人と使えない人との間に生じる格差のことです。
インターネットは、情報収集や娯楽などのあらゆる場面で、私たちの生活に欠かせないものです。インターネットを自由に利用できないことは、QOL(生活の質)の低下につながる恐れがあります。
また、世界ではすでに多くの国々が、ウェブアクセシビリティの義務化を進めています。例えば、フランスでは2020年から一部の企業を対象に、ウェブアクセシビリティの基準と罰則を設けました。また、アメリカでは、ウェブアクセシビリティを十分に確保していなかったことが原因で起訴された件数が増えています。
そのため、日本でも国際的な動向にならって、ウェブアクセシビリティの法制化を進めていると考えられます。
概要|2024年4月1日から施行
2024年4月1日から施行される改正障害者差別解消法では、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます。つまり、ウェブサイトを持つすべての事業者が適用範囲になるというわけです。ただし、「過重な負担」が認められる場合は、合理的配慮を実施する義務の内容が限定されるかもしれません。
ウェブアクセシビリティでは、主に「WCAG」という基準が用いられています。日本ではJIS規格(JIS X 8341-3:2016)をもとに診断されます。
基準の中では、ウェブアクセシビリティの達成度合いによるレベルが「AAA・AA・A」の3段階に分けられています。求められるレベルは、ウェブサイトの運営元によって異なり、国や地方公共団体は「AA」、民間企業は「A〜AA」を目指すことが推奨されています。
日本では、ウェブアクセシビリティへの対応を行わないことに対する罰則はありません。しかし、早めに対応を行うことで企業の取り組みとしてアピールでき、会社のイメージやブランディングにつながります。
ウェブアクセシビリティ義務化に向けてやるべきこと
ウェブアクセシビリティ義務化に向けてやるべきことは、下記の3つです。
- 改善計画を明確に決める
- 人的リソースと予算の確保
- ウェブアクセシビリティについての教育
それぞれ詳しく説明します。
改善計画を明確に決める
ウェブサイトのウェブアクセシビリティ対策として、まずはJIS規格のどの適合レベル(A、AA、AAA)を目指すかを決めましょう。決定したレベルをもとに、誰でも使いやすい構造になっているかを確認し、現状のウェブサイトの状況を把握します。
このとき、「使いづらいと感じる機能はないか」という視点で確認を行い、改善点をまとめていくのがポイントです。
ウェブサイト状況を把握し改善点をまとめたら、ウェブサイトを良くするための具体的な計画を策定し、計画に沿ってウェブサイトを改善しましょう。改善計画を策定するときは、具体的な目標やスケジュールなどを明確化することが重要です。また、計画の実施状況を定期的に確認し、必要に応じて見直しをしてください。
人的リソースと予算の確保
ウェブアクセシビリティを良くするためには、予算と人的リソースが必要です。
人的リソースに関しては、デザインやコーディングなど、ウェブアクセシビリティに関する知識とスキルを持った人材を確保しなければいけません。また、ツールやソフトウェアの導入費、スタッフの教育費などの費用がかかります。ウェブアクセシビリティの対応を外注する場合は、業者への委託費が必要になるでしょう。
必要な費用を理解し、予算を確保しなければウェブアクセシビリティに対応するのは難しいです。予算を確保するために、経営層の理解と協力を得られるよう努めましょう。
ウェブアクセシビリティについての教育
ウェブアクセシビリティに関する教育は、ウェブサイトの担当者だけでなく、会社全体の取り組みとして実施するのが望ましいです。ウェブアクセシビリティの考え方やガイドライン、具体的な改善方法などを社員全員が理解することで、組織全体でウェブアクセシビリティの向上に向けた意識を高められます。
ウェブアクセシビリティに関する知識を持つ自社の社員によるセミナーや、専門業者へのコンサルティング依頼などを行い、ウェブアクセシビリティの改善を続けて実施できるようにしましょう。
まとめ
ウェブアクセシビリティは、情報社会における平等なアクセス権を保証するために不可欠です。ウェブアクセシビリティを実現するためには、字幕や手話通訳を提供したり、互換性の確保をしたりすることで、さまざまな人がウェブサイトから情報を得られるようにしなければいけません。
また、ウェブアクセシビリティに対応すれば、ウェブサイトが使いやすくなるため、ユーザビリティが高まりアクセス数や利用者数の増加が期待できます。さらに、離脱していた層や見込み客の獲得ができるだけでなく、SEOにも効果がある点はメリットです。
2024年4月に施行される障害者差別解消法の改正により、「合理的配慮」が義務化されることになりました。これに伴い、ウェブサイトを持つすべての事業者に対して、ウェブアクセシビリティ対応の義務が求められます。
そのため、ウェブアクセシビリティ義務化に向けて改善計画を明確に決め、計画に沿ってウェブサイトを改善していかなければいけません。また、ウェブアクセシビリティの知識とスキルを持った人材や予算の確保も必要です。
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