定性分析と定量分析の違いとは?Webマーケティングでの目的や手法を徹底解説

PCに向かう男性

Webマーケティングで成果を出すにはデータ分析が不可欠ですが、「定性分析」と「定量分析」の違いをご存知でしょうか。この2つは目的も手法も異なり、正しく使い分けることが重要です。

この記事では、Webマーケティング初心者の方へ向けて、両者の根本的な違い、具体的な手法、目的別の使い分け方を解説します。この記事を読めば、データに基づいた的確な施策立案の第一歩を踏み出せます。

目次

定性分析と定量分析の違い

虫眼鏡で書類を見る男性

定性分析と定量分析の最も大きな違いは、扱うデータとその目的にあります。

定性分析は、インタビューでの発言やSNSの口コミといった数値化できないデータを扱い、「なぜユーザーはそう考えるのか?」という行動の背景や深層心理を探ることを目的とします。これにより、想定外の課題発見や深いインサイトを得られるメリットがありますが、分析者の主観に左右されやすい側面もあります。

一方、定量分析は、アクセス数や購入率などの数値化できるデータを扱い、「どれくらいのユーザーがサイトを訪れたか?」といった事実や全体の傾向を客観的に把握することが目的です。客観的なデータで判断できる点が強みですが、数値の裏にある「なぜ」までは分かりません。

このように、両者は補完関係にあり、目的によって使い分けることが肝心です。

定性分析の基本と主な手法

データを見ながら話す男女

定性分析とは、インタビューでの発言やユーザーの行動といった、数値で表すことが難しいデータから、その背景にある「なぜ?」や「どのように?」を探る手法です。

ここでは課題の発見や仮説構築のヒントを得るための、Webマーケティングにおける代表的な手法を3つご紹介します。

ユーザーインタビュー・アンケートの自由回答

ユーザーインタビューは、ユーザーに直接「なぜこの商品を選んだのですか?」といったオープンな質問を投げかけ、その回答を深掘りする代表的な定性分析の手法です。数値データだけでは決して見えてこない、ユーザーの本音やサービスの利用実態、潜在的なニーズを明らかにすることができます。

例えば、サイトの離脱理由を尋ねることで、開発者が想定していなかった意外な問題点が見つかるケースは少なくありません。また、アンケート調査に設けられた自由回答欄も、ユーザーの具体的な意見や感情が表れるため、貴重な定性データとなります。

これらの「生の声」は、新たな施策のアイデアを創出したり、顧客理解を深めたりするための重要なインサイトの源泉となるのです。

ヒートマップ解析

ヒートマップ解析は、専用ツールを用いてWebサイト上でのユーザー行動を可視化する手法です。ページのどこがよくクリックされているか、どこまでスクロールされているか、どこでマウスの動きが止まっているかといったデータを、サーモグラフィーのように色で直感的に示してくれます。

例えば、クリックできるボタンではない画像が頻繁にクリックされていれば、ユーザーがそこにボタンがあると誤解している可能性が分かります。また、重要な情報が書かれている箇所までスクロールされずに離脱しているユーザーが多ければ、ページの構成を見直す必要があると判断できます。

このように、ヒートマップ解析は、ユーザーがどこで迷い、何に興味を持っているのかを視覚的に捉え、UI/UXの具体的な改善点を発見するために非常に有効な定性分析です。

SNSや口コミの感情分

SNSや口コミの感情分析は、X(旧Twitter)やレビューサイトなどに投稿されたユーザーの声を収集・分析する手法です。自社の商品やサービス、あるいは競合について、ユーザーがどのような文脈で語り、どのような感情(ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル)を抱いているかを把握します。

例えば、新商品の発売後にSNS上の反応を分析することで、マーケティングメッセージが意図通りに伝わっているか、あるいはどのような点が評価され、何に不満を感じているのかをリアルタイムで知ることができます。

これらの定性的なフィードバックは、ブランドイメージの実態を把握したり、顧客満足度を測ったりする上で重要なインサイトとなり、今後のプロモーション戦略や商品改善に活かすことが可能です。

定量分析の基本と主な手法

打ち合わせする様子


定量分析とは、アクセス数やコンバージョン率、顧客の年齢構成など、数値で表せるデータを統計的に分析する手法です。

Webサイトや施策の現状を客観的な「量」で把握し、全体の傾向を掴んだり、仮説が正しかったかを検証したりすることを目的とします。ここでは代表的な3つの手法を見ていきましょう。

アクセス解析(GA4, Search Console)

アクセス解析は、Google Analytics 4 (GA4) や Google Search Console といったツールを用いて、Webサイトのパフォーマンスを数値で分析する定量分析の基本です。これらのツールを使えば、「どのページが何回見られているか(PV数)」、「サイトに訪れたユーザーの年齢や性別、地域」、「どの検索キーワードで流入しているか」といった多角的なデータを取得できます。

例えば、特定のページの直帰率が極端に高いことが分かれば、そのページに何らかの問題があると推測できます。また、スマートフォンからのアクセスが大多数を占めているなら、モバイル表示の最適化が急務であると判断できます。

このように、アクセス解析はサイト全体の現状やユーザーの動向を客観的な数値で把握し、改善すべき点を特定するための基礎となる分析手法です。

広告効果測定(CTR, CVR, CPA)

広告効果測定は、Web広告の成果を具体的な数値指標で評価する定量分析です。

代表的な指標には、広告が表示された回数のうちクリックされた割合を示すCTR(クリック率)、サイト訪問者のうち成果に至った割合を示すCVR(コンバージョン率)、そして1件の成果獲得にかかった費用を示すCPA(顧客獲得単価)があります。

これらの指標を継続的に計測・分析することで、出稿している広告キャンペーンが費用対効果に見合っているかを客観的に判断できます。

例えば、CTRは高いのにCVRが低い広告があれば、広告の訴求内容と遷移先のページ内容にズレがあるのではないか、という仮説を立てることができます。広告運用において、これらの数値を基にした改善活動は成果を最大化するために不可欠です。

A/Bテスト

A/Bテストは、Webページや広告クリエイティブなどの要素について、2つ以上のパターン(AとB)を用意し、どちらがより高い成果を出すかを実際にユーザーに表示して検証する定量分析の手法です。

例えば、「ボタンの色を赤と緑のどちらにすればクリック率が上がるか」や「キャッチコピーを2案のうちどちらにすればコンバージョン率が高まるか」といった具体的な仮説を、実際のユーザー行動に基づいた数値データで客観的に判断することができます。

感覚や推測ではなく、事実に基づいてデザインや文言を決定できるため、WebサイトやLPの改善プロセスにおいて非常に強力な手法となります。A/Bテストを繰り返すことで、コンバージョン率を継続的に最適化し、ビジネス成果を最大化することが可能になります。

目的別の使い分け方と判断基準

虫眼鏡で書類を見る女性

定性分析と定量分析は、どちらか一方が優れているというものではありません。それぞれの特性を理解し、解決したい課題や目的によって適切に使い分けることが極めて重要です。

ここでは、どのような状況でどちらの分析手法を選択すべきか、その判断基準を具体的に解説します。

定性分析|仮説の発見や改善点の洗い出し

「なぜか最近、サイトの離脱率が上がっている」「新商品のアイデアが欲しい」といった、問題の根本原因や答えがまだ明確になっていない段階では、定性分析が非常に有効です。

定量分析で異常な数値を発見したとしても、その「なぜ」までは分かりません。そこでユーザーインタビューを実施して顧客の生の声を聞いたり、ヒートマップでユーザーの行動を観察したりすることで、数値の裏に隠された課題やニーズを探ります。

ユーザーの「使い方が分からない」「この情報が欲しかった」といった質的な情報から、開発者側では思いもよらなかった改善点が見つかることも少なくありません。このように、定性分析は、次のアクションにつながる具体的な仮説を構築するための重要なステップとなります。

定量分析|仮説の検証や成果測定

「サイトのデザインを変更すれば、売上が10%向上するはずだ」といった具体的な仮説を検証したい場合や、「先月実施した広告キャンペーンは成功だったのか?」といった施策の効果を客観的に評価したい場合には、定量分析が不可欠です。

例えば、定性分析から得られた仮説に基づいてサイトを改修した後、A/Bテストを実施すれば、本当にその改修がコンバージョン率の向上に貢献したのかを数値で明確に証明できます。また、キャンペーンの前後で売上やアクセス数を比較することで、その施策の投資対効果を客観的に判断し、次の予算配分や戦略立案に活かすことができます。

定量分析は、ビジネス上の意思決定を事実に基づいて行うための強力な根拠となるのです。

Webマーケティングでの具体的な活用事例

PCを見ながら笑顔の女性

理論だけでは、実際の活用イメージが湧きにくいかもしれません。そこで、Webマーケティングの現場で定性分析と定量分析がどのように組み合わせて使われているのか、具体的な活用事例を3つのシナリオでご紹介します。

これらの事例を通じて、両者の連携の重要性を理解しましょう。

LP改善のためのユーザー行動分析

まず定量分析としてアクセス解析を行い、特定のランディングページ(LP)の離脱率が他のページに比べて著しく高いという事実を発見します。しかし、これだけではなぜユーザーが離脱しているのか、その理由までは分かりません。

そこで次に定性分析として、そのLPにヒートマップ解析を導入します。すると、ユーザーが料金プランの比較表あたりでページを上下に何度もスクロールしており、情報を探して混乱している様子が伺えました。さらに数名のユーザーにインタビューを行うと、「料金プランの比較が分かりにくい」という声が多数挙がりました。

この定性的な結果に基づき、料金プランの表デザインをシンプルで分かりやすいものに改善したところ、再度定量分析で効果測定を行うと、離脱率が大幅に低下し、コンバージョン率の向上につながりました。

広告運用におけるクリエイティブ検証

新しい広告クリエイティブ(バナー画像)を2種類作成し、まずは定量分析であるA/Bテストを実施します。その結果、クリエイティブAの方がBよりも2倍高いCTR(クリック率)を記録したという客観的な事実が得られました。

次に、なぜAが好まれたのかという理由を探るため、SNS上で広告への反応を定性分析します。ユーザーのコメントを収集・分析すると、「Aのモデルの表情が楽しそうで、自分も使ってみたくなった」「商品の利用シーンがイメージしやすい」といったポジティブな意見が多く見つかりました。

このことから、ユーザーの共感を呼んだ要因を具体的に特定でき、その知見を次回のクリエイティブ制作に活かすことで、広告運用の成功確率を高めていくことが可能になります。

SNSキャンペーンの反応分析

新商品発売に合わせてX(旧Twitter)でプレゼントキャンペーンを実施したとします。まず定量分析では、キャンペーン関連投稿のインプレッション(表示回数)や「いいね」、リポスト数を測定します。これにより、キャンペーンがどれだけ多くの人に届き、拡散されたかという規模を客観的に把握できます。

それと同時に定性分析として、キャンペーンに寄せられたコメントや引用リポストの内容を分析します。「デザインが可愛い」「この機能が嬉しい」といったポジティブな意見だけでなく、「もっと〇〇な色が欲しい」「価格が高い」といった具体的な要望や不満も収集できます。

これらの質的な情報は、次の商品開発やプロモーション戦略を考える上で、定量データだけでは得られない貴重なヒントとなるのです。

分析精度を高める定性×定量の組み合わせ方

Pc画面を見ながら話す女性たち

Webマーケティングで継続的に成果を出すためには、定性分析と定量分析を単独で行うのではなく、両者を組み合わせて相乗効果を生むことが非常に重要です。

多くの場合、まず定量分析でアクセス解析などを行い、サイト全体の現状から「離脱率が高いページ」や「CVRが低い流入経路」といった問題エリアを客観的な数値で特定します。次に、その「なぜ」を探るために定性分析を用い、ヒートマップやユーザーインタビューで原因を深掘りし、「〇〇が原因ではないか」という具体的な仮説を立てます。

そして、その仮説に基づいて施策を実行した後、再び定量分析であるA/Bテストなどで効果を検証します。このように、定量で課題を発見し、定性で原因を探り、定量で成果を証明するというサイクルを回すことで、データに基づいた的確な意思決定が可能になり、分析の精度を飛躍的に高めることができるのです。

まとめ

チームミーティングの様子

今回は、Webマーケティングにおける定性分析と定量分析の違いについて、目的や手法、具体的な活用事例を解説しました。

定量分析は、アクセス数やコンバージョン率などの数値を用いて現状を客観的に把握するのに有効です。一方で定性分析は、ユーザーの行動や発言を通じて、その背景にある課題や感情を理解するのに役立ちます。

どちらか一方だけでは偏りが生じやすく、的確な判断につながりません。両方を組み合わせて活用することで、データに基づいた精度の高い意思決定が可能になります。まずは取り組んでいる施策に対し、「数字で確認すべきか」「理由を深掘りすべきか」を意識し、適切な分析手法を選んでみてください。

なお、「自社だけで正しく分析できるか不安」「具体的にどう実務に落とし込めばいいか分からない」と感じる場合は、Webマーケティングに強い「ウェブサークル」までお気軽にご相談ください。専門的な視点から最適なサポートをご提案いたします。

この記事を書いた人

ウェブサークルのコンテンツ事業部が、日々の現場で感じたことやマーケティングのコツを、わかりやすくまとめて発信しています。
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